借主の自覚

学生ローンの利用者で、自分が借りているという自覚が全くない学生がこのところ多く見られるという。
これはいったいどういうことだろうか?

実は学生ローンの利用者に多く見られるマルチ商法の類の中で、一見「名義貸し」と錯覚してしまう悪質商法が流行っている。
本人は名義貸しのつもりでも、学生証や免許証は自分のものを提示し、自ら申込書や契約書を書いているので、契約自体は自分が契約したという事に気づいていないのだ。
少し考えれば、イヤ、考えなくても常識的にはわかるはずなのだが、意外と理解できていない人が多いようだ。

常識的物事の判断力が低下しているのか、それとも騙す側の口が相当うまいのか、いずれにしても奇奇怪怪な話である。
この名義貸しの被害にあったという男性から話を聞いた事があるのだが、名義を貸す行為そのものがアルバイトであって、報酬を受けているというのだ。
しかも、返済は騙した側の人間がする契約になっており、被害者はそれを鵜呑みしてしまったらしい。

当然、学生ローンへの返済などするはずもなく、学生ローンから送られてきた督促状を見て、気づくパターンが多いようだ。
この男性いわく、はじめは何のことかさっぱりわからなかったという。
我々からしたら大変失礼だが、こちらが「はぁ??」という話である。

借りたのはあんただろ!?
自分で申込書を書いて契約書にサインしたんだろ!?
そして、学生ローンから金を受け取ったんじゃないのか!?
そう言いたかったが、そこはグッとこらえた。

要するにこの男性は、全く自分で借りたという意識がないのである。
空いた口が塞がらないとはよく言ったものだが、正にその状態だ。
さらに驚いたのが、この男性が発した一言である。
「このお金は自分が返さなければいけないんですか?」

またまた「はぁ!?」となる。
なぜ、このような当たり前の話が分からないのか?
これじゃ騙されるのも無理はないか。
この学生、実は某有名な私立大学の学生である。
入学試験を突破し、優秀な頭脳の持ち主なのだが、なぜこんな子供騙しにひっかかるのか、皆目見当もつかない。

一応、学生ローンへの返済義務は自分にあることなどを十分に説明し、ようやく理解したようだ。
最後は自分で責任を持って返済すると言い残し、その場を立ち去っていった。
大人でも解けない難しい数学問題などはいとも簡単に解いてしまうのに、中学生でもわかりそうな騙しになぜ引っかかるのか?
結局、最大の疑問を解くことはできなかったが、今後の研究課題とすることで終わらせることにした。